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イタリア近現代史研究会

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2010年 06月 14日

7月例会

共 催: 明治大学イタリア文化研究所

日 時: 2010年7月24日(土) 15:00~18:00

会 場: 明治大学 リバティータワー12階 1124教室

報告者: 奥田 耕一郎 (おくだ こういちろう)

題 目: 全国ドーポラヴォーロ事業団の労働者住宅施策にかんする建築史的考察
      -「トレ・ヴェネツィエ国民住宅家具コンクール」 (1927年)を中心に-

【報告要旨】
 報告者は、建築をひとつの要素として含む複合的な歴史的断面を示すものとして、ファシズム期イタリアのドーポラヴォーロ制度に注目しており、その活動に関連した建築についての理解は、ファシズムとの関連に留まらず、近代化の過程のなかでのファシズム期の建築の位置を考察する上でも重要であると考えている。
 ドーポラヴォーロは、労働と余暇の時間を明確に区別することをその発想の基礎に置くが、これは労働者の周囲にある空間を、労働に従事する空間と、余暇を過ごす空間に二分することを意味する。全国ドーポラヴォーロ事業団(Opera Nazionale Dopolavoro、以下O.N.D.)の『Realizzazioni e Sviluppi dell’Opera Nazionale Dopolavoro』(1933年)は、ドーポラヴォーロの事業を体育事業、芸術事業、教育事業、社会支援事業の 4 領域に分類するが、建築の分野との関連からは、体育、芸術、教育事業をそれら活動のための施設整備として、社会支援事業を低所得者層の生活環境への介入として把握することができる。すなわち、労働者の余暇の空間は、ドーポラヴォーロ活動の空間と居住空間の2つに大別されたのである。
 このうち後者にかんして、O.N.D.は主に労働者住宅の改善に取り組んだ。その取り組みは1927年から1933年にかけて行われ、1927年からの3年間は、労働者の住まう集合住宅に置かれるべき低価格の家具の量産をめざし、1930年からは一戸建てのモデル住宅の提案に力を注いだ。本報告では、O.N.D.が発行した各種出版物・定期刊行物を用い、O.N.D.の最初の住宅関連事業である「トレ・ヴェネツィエ国民住宅家具コンクール」(1927年)を中心に、その経緯・内容を時系列に沿って明らかにしつつ、建築史の立場からその特徴・意味の考察を試みる。

by storia-italiana | 2010-06-14 18:44 | 2010年度


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