2006年 08月 26日
2006年8月25(金)・26(土) 場 所:明治大学 駿河台校舎 研究棟第2会議室(4F) テーマ: イタリア自由主義期、「国民国家」形成過程における制度と社会 8月25(金)14:00~14:30 主旨説明:北村暁夫 8月25(金)14:30~16:30 高橋利安 (コメント:鈴木桂樹) 中央・地方関係におけるイタリア国民国家の特徴‐Prefetto制度を中心として‐ 8月26(土)10:00~12:00 池谷知明 (コメント:小谷眞男) 選挙制度改革と国民国家形成‐1882年選挙制度改革を中心に‐ 8月26(土)13:30~15:30 藤澤房俊 (コメント:辻昌宏) イタリアの「少国民形成」と小学校教科書 報告要旨 ■高橋 イタリア王国は、権力の垂直的編成としての国家形態としては、すぐれて中央集権的な体制であった。 その中核に座っていたのが地方(県)における中央政府の代表者であったPrefetto制度であった。 本報告では、Prefetto制度についての研究の出発点として、Prefettoの制度としての概要を その歴史的形成・展開を中心に明らかにすることを課題とする。 現在のところ、報告の概要は以下の通り。 Ⅰ はじめに 課題および検討の時期の限定 Ⅱ Prefettoの歴史的原型 1.フランスの制度 2.サルディニア王国における地方制度の変遷 Ⅲ イタリアの統一の進展とPrefettoの確立 1.コムーネ及び県に関する法律(1859年10月23日 Rattazzi法) 2.Prefettoの確立(1861年10月9日王国令250号) 3.行政統一法(1865年3月20日法律第248号) Ⅳ クリスピ時代のPrefetto Ⅴ ジョリッティ時代のPrefetto Ⅵ まとめ ■池谷 本報告は、1882年選挙法改正に焦点を当てて、イタリアにおける「国民国家」形成を 考察しようとする。 本報告が対象とする1882年選挙法は1848年選挙法を改正したものである。1848年選挙 法は、納税額に基づいて選挙権を付与していた(=納税額によって選挙権を制限していた)が、 例外的に教員、公務員、司法官等、識字能力がある者を有権者としていた。それは1861年の 時点で有権者比率は人口比1.9%から構成される政治世界であり、それゆえカトリック教会か らの「法定の国」という指弾は政治階級にとって恐怖であった。1882年に改正された選挙法に おいては、納税額が引き下げられると同時に、識字能力があれば納税額にかかわらず選挙権 が付与されるところとなった。これにより1880年まで人口比2%前後を推移していた有権者比 率は6.9%まで上昇した。 本報告は1882年選挙法改正に至るまでの議論を追いながら、第1に1882年になるまで選 挙法が改正されなかったのはなぜか(=なぜ1882年に選挙法が改正されたのか)、第2になぜ 識字能力にこだわったのか、という2つの問いに答えることをめざす。改正議論において識字能 力が一貫して問題とされたからである。この点について、Romanelliは教育制度改革との関係 を指摘する。すなわち1877年のコッピーノ法は下級小学校2年の義務教育を徹底化したが、 82年選挙法は義務教育課程修了を選挙権の要件としたからである。両者は相まって国家への 大衆の漸進的統合をめざしたというのが、Romanelliの見解である。しかし、それならばなぜ男 子普通選挙権の成立にさらに30年も要したのかということが疑問になる。この問いに答えること を報告の第3の目的とし、政治的統合(=普通選挙権の付与)という観点からの19世紀イタリア における国民国家形成の特徴と限界を明らかにしたい。 ■藤澤 サヴォイア王家を統合原理とするイタリアの国民形成が本格的に進行していた1886年に、 デ・アミーチスが出版した『クオーレ』の中に、小学生を「小さな兵士」piccolo soldato、小学 校のクラスを「あなたの分隊」la tua squadra、そこで使用される教科書を「あなたの武器」 le tue armiと記されている。 この言葉を引くまでもなく、イタリアのみならず国民形成を追求していたあらゆる国民国家に おいて、小学校は軍隊とならぶ国民形成のための重要な国家装置であった。小学校で使用さ れる「地理」の教科書は国民国家の国境を、「読本」の教科書は国語や国家への帰属意識・愛 国心を、「歴史」の教科書は国民国家の誕生の歴史を教える「武器」であった。それ故に、国民 形成の時期に小学校で使用された教科書は、国家が創ろうとする「少国民」像を直接的に映し 出しており、国民形成の研究の第一級の資料と言うことができる。 報告では、小学校教育にかかわる法令や指導要領と、その指導要領に基づいて出版された 小学校教科書と関連付けながら、自由主義時代イタリアの「小国民」形成について、下記の四 点を中心に、検討する予定である。 ① 1880 年以降の小学校教科書に関する公教育省の通達・勅令の検討 ② 1861年から第一次大戦までに発行された小学校教科書の量的・質的な変遷 ③ 1888年と1904年の指導要領 ④ 上記の指導要領に基づいて出版された教科書の分析
by storia-italiana
| 2006-08-26 23:59
| 2006年度
|
アバウト
カレンダー
研究会の概略
イタリア近現代史研究会は、1978年10月に設立された学際的な研究会です。
Associazione giapponese per lo studio della storia italiana moderna e contemporanea 専攻や所属を問わず、研究対象は歴史一般のほか、政治、法律、経済、社会、思想、宗教、教育を中心に、文学、建築、美術にまで及び、扱う時代も中世から現状までに及んでいます。 活動内容は、年度末、夏期などを除き月例会を毎月1回、全国大会を年1回、開催しています。また、イタリアから研究者を招いて討議することもあります。 研究会規約 入会希望、お問い合わせは下記まで、ご連絡下さい。 storiaitaliana@hotmail.co.jp イタリア近現代史研究会事務局 リンク イタリア文化会館 Internet Book Shop. Italia イタリアに好奇心 Mixed Moss 雑多な苔 日伊協会 カテゴリ
全体 2018年度 2017年度 2016年度 2015年度 2014年度 2013年度 2012年度 2011年度 2010年度 2009年度 2008年度 2007年度 2006年度 2001-2005年度 2019年度 2021年度 2023年度 2022年度 2023年度 未分類 ライフログ
検索
その他のジャンル
|
ファン申請 |
||