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イタリア近現代史研究会

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2006年 11月 18日

11月例会

日  時: 2006年11月18日(土) 午後3時~5時半
会  場: 明治大学駿河台校舎 リバティタワー11階1117教室

報告者: 山手 昌樹
題  目: 農業労働者の社会的状況と行動―20世紀前半のモンディーネを事例として―

〈報告要旨〉
 イタリアで19世紀末から高揚した社会主義運動のひとつの特徴は、その担い手に多数の農業労働者(ブラッチャンティ)を含んでいたことである。特にポー川流域の平野を舞台に繰り広げられた数々のストライキは労働運動史の観点から詳細に研究されてきた。しかし、それはあくまで社会主義運動や労働運動と結びついている限りにおいて注目されたに過ぎず、農業労働者の生活実態が問題にされることは少なかった。
 そこで報告では、まず第一に農業労働者の日常生活を、モンディーネ(mondine)を事例として明らかにする。モンディーネとは毎年5月下旬からの約40日間、水田の除草作業のために臨時雇用される農業労働者で、映画『にがい米』(Riso amaro)で表象されている通り、その大半は女性であった。その数はもっとも多いときで18万人に達し、地元で暮らす常雇農や借地農の妻子あるいは遠くは200キロ以上も離れたところを故郷とする出稼ぎ労働者が従事していた。
 モンディーネは研究史が示す通り、1880年代以降ほとんど毎年のようにストライキを繰り広げてきた。そして、ストライキが非合法化され労働運動が圧殺されたファシズム期においても大規模なストライキを起こしている。そのため、同時代から反ファシズム闘争の旗手としても注目されることになった。報告では第二点目としてこうしたストライキの特徴を明らかにする。
 しかし実際には、国民からの広範な支持を集めた1930年代のファシズム体制下で、反体制運動が高揚することはなかった。それどころかモンディーネに関する限り、それまでの支配階層に対する抗議活動は影を潜め、ファシズム体制が実施した福祉政策の受益者にすらなったのである。
 そこで報告では最後に、ファシズム期のモンディーネがどのような状況にあったのか、ファシズム体制は農村社会の不安定化につながるモンディーネをどのようにして統合していったか、こうした点をファシスト党の女性組織である「女性ファッシ」(fasci femminili)の活動に注目しながら展望する。

by storia-italiana | 2006-11-18 23:59 | 2006年度


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