2008年 11月 05日
11月15日(土)15時~ 報告者:倉科 岳志 題 目:「自由」と「退廃」―クローチェの『倫理学と政治学』、「歴史四部作」をめぐって(1924年~1932年)― 会 場:日本女子大学(目白キャンパス)百年館高層棟3階301会議室 【報告要旨】 B・クローチェはファシズムに抵抗した思想家として知られている。ただし、そのファシズム批判の内容は歴史的コンテストおよびクローチェの内的世界のなかで十分に位置づけられてこなかった。かれのファシズム批判を正確にとらえなおすべく、同時代に構築された「自由」と「退廃」という二つの概念を検討することが本報告の課題である。 クローチェはファシズムを「病気」あるいは「退廃」と批判しつつ、「自由」を称揚した。両概念を理解するには『倫理学と政治学』および、同時期に執筆された「歴史四部作」を詳細に分析しなければならない。両概念はクローチェ倫理学の中で展開されてくるのだが、その倫理学は政治と不可分の関係にある。そして、政治と倫理を総合的にとらえようとする立場は、すでに20世紀の初めの10年に原理的には完成しており、倫理と政治の混同を批判する区分の思想を展開していたが、同時に倫理は政治を通じてでなければ実現できないとされていた。このような立場からすれば、倫理学における深化は当然にして政治学の深化ともいえる。クローチェは1920年代にその原理的立場を踏まえつつ、「自由」と「退廃」を取り上げるようになった。その際に本論の主題にとって重要なのは従来の主張をまとめた『倫理学と政治学』ではなく、むしろ「歴史四部作」なのである。というのも、これらの作品は倫理において「自由」の対極に「退廃」というもうひとつの方向が存することを発見したからである。それゆえ、この新たな地点から『倫理学と政治学』を再解釈するとともに、「歴史四部作」を検討し、クローチェ政治学の思想的可能性を深める必要がある。 以上を踏まえ、本報告では『倫理学と政治学』に加えて、「歴史四部作」と呼ばれてきた諸作品、『ナポリ王国史』、『イタリアにおけるバロック時代史』、『一八七一年から一九一五年までのイタリア史』、『十九世紀ヨーロッパ史』を考察しつつも、同時代に書かれた他の分野の作品も同時に検討する。そのことで、『倫理学と政治学』および「歴史四部作」の内的関係を論じ、クローチェが己の哲学の根本を支える「自由」と「退廃」という二つの概念を発見する過程を解明する。
by storia-italiana
| 2008-11-05 17:30
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